ギャリー・マウロの作品は、俳優のエリザベス・テーラーを個人収集家の筆頭として、美術館はもちろんのこと、IBM社、ガネット社、USATODAY社といった大企業から、ダラスのエル・セントロ大学などの教育機関にいたるまで幅広く収集されています。
マウロのバス・レリーフ(キャンバスをベースにした浮き彫り)とブロンズは、アメリカばかりか国際的にも認められており、1988年6月にはイタリア、ミラノで個展が開かれ、世界の注目をあびました。
故エルヴィス・プレスリーをテーマに製作したバス・レリーフ2点の内、1点は故エルヴィス・プレスリー本人が購入し、現在もエルヴィス家に所蔵されています。
マウロ自身は自分を指して「ネオ・クラシシズム(新個展主義)の彫刻家」と呼び、その作風はルネッサンス時代と同様に肉体の美を謳歌しています。
そして彼の手法であるバス・レリーフは、素材と表現方法において現代美術に新しい息吹を投げかけるものです。まず生のキャンバスにデッサンし、モチーフを縫い込みキャンバスを「膨らませる」のです。その効果は絶妙で、人物像は静止したキャンバスから抜け出て遊び、踊りだし、その躍動感は彫刻された筋肉や盛り上がった胸で引き立てられています。ファースト・ナショナルバンク(テキサス州アビリーン)のために制作した作品は左右21mを越え、モチーフは人物像、クーガ、鳥、鹿などを配置したもので、壁面全体が自然と融合した一大絵巻になっています。この作品は、建築設計段階から習作を重ねて完成したものです。
このように、マウロは設計の段階から建築家、あるいはインテリア・デザイナーと十分打ち合わせ、討議するため、彼にとって作品のインスタレーションはただ一つのキャンバスだけでなく壁全体、ひいては建築物全体が表現メディアなのです。